〈愛のうた-光太郎・智恵子〉②

-男声合唱、フルート、クラリネット、弦楽オーケストラのために
(慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団120周年記念委嘱作品)

東京芸術劇場の地下の練習場から「脱出」して今日は本番。晴れのホールでのG.P.です。

と、ここまで記したあと、あまりに素晴らしいG.P.に驚き、さらにそれを上回る本番に感動し、いわば「途方にくれて」何をどう書いたら良いのかわからない状態だった。
我を忘れて引き入れられた、心が震えた、興奮して寝付けなかった、などなど、たくさんの嬉しい言葉をいただいたが、清水敬一さんからメールでいただいた「記念碑的な作品の名演奏」が集約的かつ客観的なくくりと言って良いだろう。
僕はと言えば、男声合唱と弦楽オケとホールの作り出す、何ヵ所もの予想を超えた妙音に魅せられ、何かに憑かれたような気持ちだった。
これまで25曲以上オケ曲を書き、そのうち3曲は混声合唱付きの大規模な作品だったが、今回ほどの声とオケの融合は体験しなかったように思う。
男声合唱の倍音と弦楽オケの実音の融合、と仮想してみるが、証明はできないし、別なホールで同じことが起こる保証もない。音楽もまた一期一会なのだ。
中身については反省点がいくつかあるし、「お前、もっと上手く書けないもんかね」という自分の声も聞こえる。理想はいつも彼方にあるのだ。
弦楽オケ版の再演がある時には「そこ、ここ」に手を入れるぞ、という想いを自らの裡に残して、〈愛のうた〉のレポートを一旦終えることにします。
Nコン小学校課題曲のチェック、バイオリンと箏の〈涅槃寂静〉の作曲、アンサンブル室町による新実徳英作品個展のプログラミングと新作など、やるべきことが結構あって、どうやら自分で思っているほど閑人ではなさそうなのです。