飯野明日香ピアノリサイタル&室内楽シリーズ

5月21日19時開演、東京文化会館小ホール
この会のために飯野明日香さんの委嘱によりピアノ独奏曲をものした。独奏曲は<エチュード Ⅰ~Ⅳ>(計12曲)以来、久しぶりである。飯野さんが名手であること、3年前の尺八との委嘱二重奏曲<ロンターノ C.>でキャラクターが良くわかっていることなどにより、作曲はすらすらと運んで、大晦日12月31日に書き上がった。
「良い子の現代音楽」をぶっ飛ばせ!をモットーに、痛快な曲ができたように思っている。

以下のようにプログラム・ノートを記した。

タオイズム オン ピアニズム
Taoism on Pianism
 タオイズム(道教)とは老子がその祖として考えられている「思想」の体系である。私は『老子道徳経』81章の中から自分が直観的に受け入れられる「言葉=概念」を選び、それらの「音楽化」を試みた。その「音楽化」は翻案では決してなく、私の中のユーモアとかウィットとかも動員して老子の言葉を濾過し、鍵盤上に顕れた音たちです。
 老子の言う「自然界の一物としての人間」に回帰できたかどうか、自分でもよくわからない。が、老子の言葉の数々により真っ直ぐに音の面白さに向き合えたような気がする。その意味でこの作品はディヴェルティメントの性格を持つように思わます。
 全体は5章から成る1曲(20分ほど)ですが、各章は単独演奏も可能です。

 飯野明日香さんの豊かな知性と感性、万全のテクニックに全てを委ねて作曲が進みました。貴重な機会をいただきました。
 感謝を込めて、この作品を明日香さんに献呈させていただきます。

                        新実徳英