作曲者の弁 : <神の木>―尺八とチェロのために

冒頭のG音とその周辺での尺八とチェロの得体のしれない「ゾワゾワ感」がこの編成を思いついた時から頭の中で渦舞いていた。最初の1頁を定着できた時、これはもしかしたら「境界」を跳び超えて「あちら側」に行けるかもしれないと直観した。
それに続く部分は「ゾワゾワ」とは対照的にあくまでも静謐で澄んだ世界。
前者を「神遊び=狂」(白川静)とすれば後者はまさに「神木」の厳かな佇まい。
それぞれを第1テーマ、第2テーマと考えると、以降の全てをその発展・展開と分析できると今頃気がついた。僕の作曲法は分析的ではない。次に来るべきものは何か、と「天啓」に耳をすませた結果に過ぎない。が、結果としては理にかなったものになっている。佳きものへと「導かれた」のだと思う。

全音楽譜出版社主催公演
「四人組とその仲間たち2025」
2025年12月12日(金)19時
新実徳英:〈神の木〉─尺八とチェロのために【世界初演】
黒田鈴尊(shakuhachi)
山澤 慧(vc)