<魂舞ひ>-バリトンとピアノのために

12月9日東京文化会館小ホール、19時開演
【現代室内楽の夕べ】四人組とその仲間たちコンサート2022 全音楽譜出版社主催

実に見事な、聴き応えのある初演だった。バリトン松平敬、ピアノ中川俊郎、両君の力量・感性・知性が万全に作品を捉え、かつ自分自身の表出として噴出。格調高く、時に「狂気」の相貌を帯びながら、存分に表現してくれた。
歌には音域の広さ、とくに実声からファルセットまでの様々な表情や中音域での説得力が要求される。ピアノには高度な指のテクニック、様々な音色が要求され、それらを音楽の内部に入り込んで(これはピアノの苦手領域だ)実現せねばならない。お二人それぞれのアプローチはまさに的確だった。

実は2022年全音四人組コンサートは歌曲にする、と昨年末に決めたが、この春先に取り組み始めるとにっちもさっちも行かない。ほぼ絶望状態、歌曲に決めたのを後悔したりもした(笑)。
ところが明恵上人の「あかあかや あかあかあかや あかあかや あかあかあかや あかあかや月」に出会った瞬間、パッと視野が啓けた。冒頭のピアノのフィギュールを直ぐに書き留めた。これを寝かせて置いて7月に着手。和合亮一さんにお願いしてあった<横笛の恋>のテキストが中旬に上がってきたので、先にそれを完成させ、その後戻って8月半ばに<魂舞ひ>を脱稿。

いろんな紆余曲折があるものですね。コロナ感染もありました。 間もなく今年も暮れ行こうとしています。