若林 顕 – 平均律ピアノ曲集 第1巻 全曲演奏会

2024年9月6日、東京芸術劇場コンサートホール、19時開演

「多声部に入り組んだポリフォニックな世界、それぞれの声部はお互いに自由に生き生きと対話をし、協調し、いつしか大調和の中に無限大に広がっていきます。」(若林顕)
まさにその通りの演奏が展開された、この上なく充実した空間だった。ちなみに全曲は暗譜で演奏された。
バッハの精妙極まりない構築物から、強い線・細い線、力強い線・たおやかな線…それらが外へ・内へ、様々な歌となって届いてくる。なんとも至福な時間を過ごした。
特に後半、a mollからB durに向かっての盛り上がりは圧巻。最後のh mollのフーガは複雑な旋律法・和声法が全くそのように感じさせることなく、心にしみこむ優しさで聴く者を包み込んでくれ、全体を締めるにふさわしいものとなった。
一音楽家として、この貴重な場に立ち会えたことは大きな収穫、そして悦びであった。