本の話 ⑤ 『歴史を考える』

司馬遼太郎対談集『歴史を考える』

僕は憲法第9条を守るべきだ、日米地位協定も安保条約も見直すべきだと考えていますが、実はこれらがセットになっているように思われる。山崎正和さんとの対談で司馬さんは次のようにかたる(1988年7刷を読み直している。僕が41歳の時に買ったことになる)。

司馬遼太郎
…安保条約を廃止せよというのは私も観念的には大賛成ですが、これをやる場合いろいろ考えると実にむつかしい。アメリカと手を切る以上、アメリカを仮想敵にするということも、考えておかねばならない。そうなれば自衛隊を今の百倍にしなければならないし、じつにしんどい。…

山崎正和
実際、世論というものはモザイク状になっていて、全部繋がっていないですね。安保条約に反対だ、それでも軍備はしないとなれば、これはせめて海が遮断されても当分困らないくらいのエネルギーの貯蓄をしなければならない。…

→ 大量の石油タンク NG → 原発 NG →と続き、それら世論の一つ一つは正しいが繋いでいったとき何も出てこない、と続く。

お二人の発言に共鳴するのですが、つまりは堂々巡りに陥るわけです。世界地図の真上の大国が平和主義では全くないのは周知の事実です。軍備も外交力も乏しい日本は、この先どうやって国を守っていくのか。

柄にもなく、たまにはこんな心配もします。
音と人間のことだけ考えていたい、と願っているのですが。