エラールの旅2と題された彼女のリサイタルで僕の新曲〈ロンターノ C.〉ー尺八とピアノのためにーが演奏される。この曲は尺八の本曲中もっともポピュラーな曲の一つ〈鹿の遠音〉のモチーフが中心になっている。解題すれば、ロンターノとは遠くから、C.はイタリア語で鹿を意味するcervoのイニシャル。
鹿の雌雄の呼びかわす鳴き声は限りなく神秘的な交響の空間。古人ならずとも僕も蓼科で聴いたその鳴き声に大変に魅せられた。
曲はその「遠音」に向かって展開されていく。全11段の構成。
先日第2回の練習に立ち会い、少しずつ変貌を遂げていく演奏を興味深く聴かせていただいた。曲=演奏が成長していくのを目の当たりにするのは作曲者にとって実に楽しいことである。