西村朗の思い出②

2023年5月20日14時開演、サントリーホール・ブルーローズでの 飯野明日香さんのリサイタルで西村朗作曲<極楽鳥へのエチュード>が初演された。3章構成のきびきびした曲で、いささかの衰えも感じさせなかった。演奏も作曲者の期待に応える見事なものだった。
終演後は例によって打ち上げ。ホールお向かいのワインレストランのテラスでアキラと飲み始める(西村朗と僕とはプライベートな場ではアキラvsトクと呼び合っていたので、このような表記となることをご理解下さい。今後もそのように記します)。やがて飯野明日香嬢が加わり、賑やか酒の盛り上がり。
アキラがほんとに楽しそうにはしゃいでいた。右目の下に絆創膏のようなものを貼っていたが、奇異な感じはなかった。三人でビール、そして白ワインを二本空けてご機嫌に解散。僕はグラグラの酔っぱらいと化し、明日香さんのタクシーに便乗させてもらい、送ってもらった。
これが最後の「宴会酒」になるとは思いもよらぬことだった。その後5月31日、東京芸術劇場の会議室で音楽樹の皆さんと会議。21時くらいから1階のワインパブで飲み始めた。30分くらい飲んだところでアキラは「最近どうも疲れが取れない、ちゃんと寝てるんだけどね、なんでだろう」と僕に呟いて、皆さんに「帰るね」と一言、そして退席。
この時に何らかの異変に気づくべきだった、と今にして思う。が、ありがちなこととて看過したのだった。右目の下の絆創膏と疲れが取れない、その因果関係を想像できなかった。医療の素人だから仕方がないけれど、慚愧の思いを払拭できない。