「友よ、よく覚えておけ、悪い草も悪い人間もない。育てる者が悪いだけだ」

「友よ、よく覚えておけ、悪い草も悪い人間もない。育てる者が悪いだけだ」
(ヴィクトル・ユゴー「レ・ミゼラブル」)

映画〈レ・ ミゼラブル〉(2019仏 /監督ラジ・リ )の終幕にこの言葉がテロップで引用される。ここに登場する全ての人々はそれぞれに差別の中で生きている。その差別は気づかないうちに憎しみを醸成し、それは次第に大きくなり、ついには激しくぶつかることになる。
誰が悪いのか、何が悪いのか。そしてその背後に茫漠と広がる哀しみ・悲しみを人間は乗り越えられるのか。
「悪い」少年イッサが火炎瓶を片手にぶら下げ、「良い」大人=警察隊に拳銃を向けられ、無言で立っている。この緊張の中で少年の表情が絶望と哀しみの底に沈んでいく。あるいは究極の諦念のようにも見える。このラストシーンの演技は演技を越えた凄みがある。

世界中にさまざまな差別が広がっている。それぞれの地域のなかで、そして地域と地域の間で、さらに人種間で、貧富のはざまで。私たち一人ひとりも実は当事者なのであると改めて気づかされのだった。

年始そうそうに観た〈パラサイト 半地下の家族〉(2019韓国/監督 ポン・ジュノ)も同じテーマを穿つ、力のある作品だった。

〈レ・ ミゼラブル〉のパンフレット表紙