楽譜が出版されることになると浄書という作業が行われ、原譜手稿が楽譜ワープロで打ち込まれ、やがて初校が上がって来る。これを原譜と見比べて誤りを正していく。
全てを疑ってかかるのが校正だと思うのですが、僕は全てを信じるきらいがあり、フラット記号が落ちていても、自分の中ではフラットが付いているので見落としてしまう。著者校はあてにならぬ、と編集者の間でささやかれているようだが、僕の著者校はその最たるものだろう。
このほどコーロ・カロスの委嘱で作曲した<さまよふ魂のうたー兵士たちに捧ぐ>(混声合唱とピアノ、2019年10月初演)が出版されることになり、例によって初校に10カ所ほどアカを入れ、しばらくして第2校を受け取った。いくら何でも30分の大曲に10カ所は少な過ぎると自らを疑って、初演団体の皆さんにも見てもらって下さいとお願いしたところ、さあ出てくるは出てくるは、ざっと120カ所にアカを入れるハメになった。
ハメになった、と記したが、実はこんなにありがたいことはない。おかげさまで万全の初版ができ上がるような気がしてくる。いま第3校に手を入れ、合唱団側からの最終チェックを待っているところである。出版文化の貴重さに改めて思いを馳せる。
委嘱→詩の選定(今回は『昭和万葉集』から40首以上を選び、再構成した)→作曲→練習立ち会いと加筆訂正→初演→出版の決定、そして上記の過程を経て一冊の楽譜ができ上がる。我が家に神棚はないのですが、新刊用の棚があり、初版が上がるごとにそこにならべていく。ついでにお詣り?はしません(笑)。