🌟12月9日ピアノ・トリオの練習に向かう地下鉄での雑感

坑底をあるくコンミューン(谷川雁)

という詩を読んでいたら「うっとり影を忘れた男がつぶやく」という一節があった。これはいいな、これをいただいて「うっとりと影を忘れて」と詠んで、最後をどうするかな、花かずらがピッタリだなと思い、「うっとりと影を忘れて花かずら」。ワルくないなと思ってグーグルしたら山口青邨の句であった。名句は記憶のどこかに残っているのだろう。
雁さんの「本歌取り」に気付かされたことになる。
僕との共作<白いうた 青いうた>の1曲「二十歳」のなかにある「うらぶれた四月…」「リラの香りする…」はT.S.エリオットの<荒地>の冒頭にある「四月はもっとも残酷な月、リラを死んだ土地から…」の記憶が雁さんのなかに残っていたに違いないと思われる。
こんな具合に、はっきりとした引用は別にして自分の作品のなかにも無意識な「本歌取り」があるに違いない。自分を育ててくれたのは膨大な数の音楽作品であり、それらの記憶のなにがしかが自分のなかに大量に残っているに違いない。ただし創作というものは「それらを引き出して使う」のとは全く異なる。これについてはまた新たに記すことにする。かなり込み入った事柄なのである。