『菊と刀』- 学生のころの思い出話

 恥ずかしながら学生のころの思い出話を。

 東大に入った頃は真面目な学生であった僕。何でもかんでも面白そうで、
政治になんか関心がないのに政治学の講義も取った。
 そして京極純一先生の強烈なパンチを喰らった。

その1) 先生は大講義室(数百人のキャパ)に入られるとすぐに鍵をかけてしまわれる。曰く、「教師より遅れて来る学生は教室に入る資格がない。」(朝の1コマ目、8時です)。

その2) 「諸君は理科1類の学生で大変に忙しいのは分かっているが、私としては君たちが読んでおくべき本があり、それを毎回指示する」、と言われ、黒板にサラサラとお書きになる。
 『菊と刀』(R. ベネディクト)、『現代政治の思想と行動』(丸山真男)、その他3さつ。本屋へ行ってギョッ。ベネディクトは上下2巻の文庫本。丸山はずしりと重い単行本。これにはマイッタ。
 英語、独語がそれぞれ2クラスでテキストも教授も別々。そのほかに法学、社会学、体育学、数学、物理学、…いきなりめげましたね。先生は1年間でおよそ100冊の本をお示しになったはず。

その3) 最後に試験。出席はまるで足りないのだが、そもそも出席なんか取らない。実力主義である。3題の中に「丸山真男は件の著作の中で靖国神社についてどのように述べたかを記せ」があった。もとより読んでいない僕は答えを捏造した。見事に赤点。先生は赤点の坊主どもにいちいち面接してくださる。ボク「先生、3問中2問は出来たと思うのですが…」、先生「君は靖国についてでたらめなことを書いたので、そのぶん減点です。なにも書かなければ良かった!」(つい先日、「菊と刀」の簡略英語版を買って来て読んでいるうちに、当時のことをありありと思い出したのでした)。

まあ、こんな具合の駒場生活。似たようなことは物理学の野上教授との間にもありました。
この方は野上弥生子さんのご子息であることを後に知った。いずれ書きます。

愛猫ミミ