ラインの黄金:テキストを読むと小人やら巨人、神々、黄金の指輪の魔力、その指輪に翻弄される登場人物たち、一見子どもじみた想像の広がりは奇妙でグロテスクな肥大のように思われるのだが、ひとたびそれらの言葉が音楽の中で展開されるや見事なリアリティーを結び、説得力を獲得し、人間の本性本質をえぐり出してくる。色彩豊かなオーケストラと芯の強い歌唱が聴くものの心を捕まえる。
なるほど、人はこのようにワグネリアンになるのだ。
ワルキューレ、ジークフリート、神々の黄昏。今さらとは思いつつ、付き合うしかあんめい、といった心持ちになる。折悪しく、いや折よく、新国立劇場で飯守ワルキューレが3月公演。
短小軽薄の正反対の世界に遊ぶのも、このコロナ禍の状況の中でむしろ有意義なことに思われてくる。
2019年は僕にとって大変な年で、計10作、4時間分の作品をものしたが、ワーグナー先生の足元にも及ばない。大作が必ずしも佳いとは決して思わないが、大作でしか語れない世界があるのは確かです。
18時開演22時終演、くらいのオペラを書いてみたいが、この国ではそのようなプラン自体が拒否されそうですね。お申し付けがあれば、いつでも受けて立ちます(笑)。